ある女性は・・・その8
素朴なカントリーガール、ローズは故郷のアルジェリアを除いてはフランス国外に旅したこともなく、華やいだパリの「業界」などとはまったく無縁のところで暮らしていました。
日頃は滅多に来ないパリに、私たちを訪ねてローズが夫と共にやってくる時、手土産に持ってきてくれるのは村の森で拾い集めたクルミとか、庭のぶどう棚から摘んだ小粒の少し酸っぽいぶどうだったりした。
和食をこれまで一度も食べたことのない彼女は、私が夫妻を家に呼んでちらし寿司やしゃぶしゃぶなどをご馳走した時、ぎこちない箸つかいでおっかなびっくりながら、出された分をきれいにたいらげたが、それを本当に美味しいと思ったかどうか、となると私も心許ない。
何しろフランス家庭料理以外の料理はほとんど知ることなく今日まできたのです。